燐灰石  apatite  Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)  [戻る

Fに富むものが一般的で,Clに富むものはやや少ない。OHに富むものはチャートなどの堆積岩中に微粒集合体で産し,それ以外ではまれ。

六方晶系 一軸性(−) ω=1.633〜1.655 ε=1.630〜1.651 ω-ε=0.003〜0.004 屈折率は高めだが,干渉色は低い。なお,時に結晶の対称が六方晶系から外れ,2軸性(2Vx=20°程度)を示すものがある。

形態:通常の火成岩中では自形〜半自形になりやすく,丸みのある粒状〜紡錘形や,断面が6角の柱状〜針状。

伸長:負。

多色性:無色でなし。

消光角:柱状のものは直消光。

へき開:認められない。

双晶:認められない。

累帯構造: F:Cl:OHの比率の違いがあるが,光学顕微鏡では認められない。


産状

副成分鉱物。

火成岩では,ケイ長質〜苦鉄質の火成岩に見られるが,火山岩よりも深成岩によく見られる傾向がある。なお,超苦鉄質岩にはほとんど含まれない。アルカリ深成岩やカーボナタイトには肉眼的な大きさで豊富に含まれることがあり,リンや希土類(Caを置換して存在)の資源になる場合がある。

堆積岩ではチャート中にハロゲンに乏しいものが産するが,微粒で偏光顕微鏡では確認できない場合が多い。その細い割れ目を,銀星石などの他のリン酸塩鉱物との集合体で充填することもある。

変成岩では,スカルンや広域変成岩にしばしば認められる。苦鉄質岩起源の結晶片岩である角閃石片岩ではルチルやくさび石などのチタン鉱物と密接に共生している場合があり,この燐灰石(F・Clに富む)−チタン鉱物共生体は,変成流体中でTiがTi(F,Cl)4で移動していることを示し,その中の石英脈(分泌脈)中には肉眼的な大きさで共生していることもある。




花こう岩中の燐灰石 Ap:燐灰石,Mt:磁鉄鉱,Bt:黒雲母,Hb:普通角閃石,Qz:石英,Pl:斜長石

副成分鉱物として時々見られ,このように柱状の自形のことが多い。屈折率は比較的高く輪郭は明瞭だが,クロスニコルでは干渉色は低く1次の灰色程度。





花こう岩中の燐灰石 Ap:燐灰石,Mt:磁鉄鉱,Bt:黒雲母,Hb:普通角閃石,Af:アルカリ長石

深成岩では磁鉄鉱の多い部分には燐灰石がややまとまって見られる場合がある。右方のものは柱状の自形の縦断面で短冊状,左方は横断面で6角形(光軸方向なのでクロスニコルではほぼ暗黒)。花こう岩・閃緑岩・はんれい岩のそれぞれの全岩分析値で,同種の岩石同士ではFeとPはやや正の相関を示し,それはこのように磁鉄鉱と燐灰石が密接に共生することによる。
一見,ジルコンに似るが,干渉色ははるかに低く,黒雲母に対し,放射性ハロを示すことはない。





閃長岩中の燐灰石 Ap:燐灰石,Mt:磁鉄鉱,Bt:黒雲母,A:普通輝石,Af:アルカリ長石

閃長岩には燐灰石がまとまって見られる場合があり,このように粒度も粗い。また,カーボナタイトでは燐灰石は主成分鉱物として含まれることがある。なお,閃長岩中の普通輝石はTiに富み,このように明瞭な多色性を示す。